ソフト開発グループ「Finath(ファイナス)」のホームページ
競馬総合ソフト「スピリット」
対応機種:Windows XP/2000/Vista が動作する機種
 

スピリットコラム「騎手のペース判断2007」
  Written by Kitao Nakamura.

競馬総合ソフト「スピリット」前作「名馬3」では、作者が試行錯誤で研究をおこなって産まれた、騎手の「オーバーペース敗因率」「スローで後方敗因率」を表示することができます。

オーバーペース敗因率…芝(良稍)の1600m以上レースでの敗戦(人気よりも着順が悪かった)レースのうち「速いペースで飛ばしすぎたことが敗因」と思われる割合を表示します。

スローで後方敗因率…芝(良稍)の1600m以上レースでの敗戦(人気よりも着順が悪かった)レースのうち「スローで後方に溜めすぎたことが敗因」と思われる割合を表示します。

前作「名馬3」時代にも、騎手のペース判断についてコラムを書いたのですが、その続編ということで今年(2007年度)のデータを中心に分析してみたいと思います。

まず、結果をまとめた下の表をご覧ください。

(騎手の敬称は略させていただいています)

「オーバーペース敗因率」「スローで後方敗因率」
(芝で1600m以上のレースのみを参照)
騎手名
逃げ先行率
オーバーペース
敗因率
スローで後方
敗因率
岩田康誠
39%
12.0%
25.3%
安藤勝己
38%
4.8%
47.6%
田中勝春
34%
6.7%
13.3%
横山典弘
21%
4.2%
35.2%
後藤浩輝
30%
5.6%
25.9%
蛯名正義
21%
4.8%
22.2%
中館英二
41%
20.3%
8.1%
武豊
27%
1.6%
29.5%
吉田隼人
22%
8.9%
28.9%
四位洋文
29%
0%
25.6%
鮫島良太
29%
14.9%
17.0%
藤田伸二
44%
3.3%
10.0%
 
 
 
松岡正海
36%
14.5%
21.8%
和田竜二
47%
11.4%
14.3%
(2007年度のリーディング上位騎手 5月24日現在
+個性的な結果が出た2騎手)


今年は、岩田,安藤勝,田中勝の躍進、武豊の(例年と比べると)スランプなど、騎手の勢力図が大きく変化している年と言えます。この辺りの要因にもつながるような、とても興味深い結果が出ています。

「オーバーペース敗因率」が低い騎手
に注目すると、四位(0%),武豊(1.6%)は1ランク抜け出した低い数値を叩き出しています。リーディング上位のいわゆる「うまい」と言われている騎手も、低い数値で安定しています。リーディングトップの岩田はあまり良くない数値(12.0%)になっていますが、これは、積極的に前目で競馬をすることが多いことが要因と思われます。

岩田や中館,和田のように、「逃げ先行率」が高い騎手は、オーバーペースになってしまう確率は高くなります。逆に、横山典や蛯名、吉田隼、武豊のように、「差し追込」の戦法を多用する騎手は、滅多にオーバーペースにならず、派手な負け方は少なく(馬主や調教師に対して、悪い騎乗の印象が付きにくい利点もある)なります。

そんな状況の中で、特筆すべきなのは、田中勝,安藤勝,藤田の3ジョッキー。果敢に先行するレース(負けた場合大負けの可能性があるので、馬主や調教師からの評価に対するリスクも大きい)をしながらも、オーバーペースになってしまうことが少なく、多くの勝ち星を上げています。

ここで、武(豊)が今年、勝ち星を伸び悩んでいる最大の理由が見えてきます。 武が騎乗停止で休んでいた間に、安藤勝と岩田に強い馬が回りました「その強い馬(武と互角の馬)で、安藤勝と岩田に完璧な前目(逃げ先行)の競馬」をされてしまい、今までの武の戦法(強い馬で、溜めてゴール前で計ったように格好良く差す)が通じなくなってしまったレースが多いように思います。

特に安藤勝には、昨年に比べて強い馬が集まっていて(昨年平均人気3.67→今年2.83)、驚異的な勝率(26%)を叩き出しています。これは絶好調2005年度の武(25%)を超えるほどの数値で、相当な勝負強さが伺えます。武の不振というよりも、アンカツ,岩田の飛躍が真実と思われます。

「オーバーペース敗因率」が高い騎手に注目すると、今回ももうダントツで個性的なジョッキーが独りいます。その中館は、「スローで後方敗因率」もダントツで低く、とにかく「逃げる」「先行する」というこだわりが感じられます。ただし馬券的には、ペースが速くなりそうなときは敗戦の率が高いので要注意です。

それから、岩田,鮫島良、松岡、和田も「オーバーペース」の傾向が強く、攻めるレースをする傾向があります。

「スローで後方敗因率」が低い騎手は、田中勝,中館,鮫島良,藤田。「逃げ先行率」「オーバーペース敗因率」が高めの騎手と一致します。

その中で藤田は、あの中館をも上回るような積極性を見せながらも、ほとんどオーバーペースになることなく、豪腕で終いまで馬を持たせて上位に食い込みます。藤田が乗る馬の強さは、他のトップジョッキーと比べて明らかに劣る(平均人気…4.56)中での、現在の成績(勝率16%,連対率34%)は信じられないほどの凄い成績です。 今回のデータ分析的にも、「最もペース判断がうまいジョッキー」と言えるでしょう。

「スローで後方敗因率」が高い騎手は、安藤勝,横山典,武豊。この3者は、ジョッキー人気による過剰人気になることもあるため、スピリットの「敗因率」が、若干高めに出てしまうことも多少はあります。ただし、それを割り引いても、負けるときは「スローで後方から追い込んで届かず」が敗因なことが多いようです。

その中で特徴的なのは安藤勝。「逃げ先行率」が高いのに、「スローで後方敗因率」も異様に高くなっています。これは、「いい位置に付けて競馬をするけれども、仕掛けを他騎手よりワンテンポ遅らせることが多い」騎乗スタイルによるものだと思います。この仕掛けの遅らせが決まって勝利することも多いが、逆に「スローで差し届かず」の結果もそのぶん多く産まれているようです。


前回のコラム(2004年11月)の時と、今回(2007年度ダービー前まで)を比べてみると、各騎手の「オーバーペース敗因率」が下がり、「スローで後方敗因率」がだいぶ上がっています。このことは、「前残りのスローなレースが、ますます増えてきた」ことを如実に表していて、レースのレベルは残念ながら下がってしまっている(力勝負になるレースが減っている)ように思えます。

特に「エンターテイメントとしての競馬」は、スローな流れのレースよりも、「淀みない流れでの力勝負」のほうが面白いと、個人的には思っています。今回のデータ的に最高の数値が出ている今年度の藤田,田中勝は、チャンスがあれば果敢に、しかも馬をバテさせることなく先行してレースを作り、好成績を上げています。この両ジョッキーは今後も、その高い技術で、レースを面白くしてくれるのではないでしょうか。

※上記のデータ分析は、騎手の傾向を語る上での一部分に過ぎません。「騎手の上手さ」には、たくさんの要素が絡みますので、数値が良くないから下手な騎手ということではありません。あくまでも「ペース判断」に対しての一目安です。

(騎手の敬称は略させていただいています)



「スピリット」ホームページへ戻る

 
ご感想・ご意見などお待ちしています
気軽にお寄せ下さい

Copyright(C)2002-2007 Kitao Nakamura.